『命とは君たちが持っている時間である・日野原重明』
僕は今人生において最も大切だと思うことを
次の世代の人に伝えていく活動を続けているんです。
僕の話を聞いた若い人たちが何かを感じ取ってくれて
僕たちの頭を乗り越えて前進してくれたらいいなと。
その一つとして僕は二年前から二週間に一回は
四十五分間の授業をやっています。
最初最初に校歌を歌ってもらいます。
前奏が始まると子供たちの間に入って
僕がタクトを振るの。
すると子供たちは外から来た年配の先生が
僕らの歌を指揮してくれたというので
心が一体になるんですね。
僕が一貫してテーマとしているのは命の尊さです。
難しい問題だからなかなか分からないけれどもね。
でも「自分が生きていると思っている人は手を挙げてごらん」
と言ったら、全員あげるんです。
「では命はどこにあるの」って質問しますと
心臓は手を当てて「ここにあります」と答える子がいます。
僕は聴診器を渡して隣同士で心臓の音を聞いてもらって
このように話を続けるんです。
「心臓は確かに大切な臓器だけれども
これは頭や手足に血液を送るポンプであり、命ではない。
命と感じるもので、目には見えないんだ。
君たちね。
目には見えないけれども大切なものを考えてごらん。
空気見えるの？ 酸素は？ 風が見えるの？
でもその空気があるから僕たちは生きている。
このように本当に大切なものは
目には見えないんだよ」と。
それから僕が言うのは
「命はなぜ目に見えないか。
それは命とは君たちが持っている時間だからなんだよ。
死んでしまったら自分で使える時間もなくなってしまう。
どうか一度しかない自分の時間、命をどのように使うかしっかり考えながら
生きていってほしい。
さらに言えば、その命を今度は自分以外の何かのために
使うことを学んでほしい」
ということです。
僕の授業を言いた小学生からある時、手紙が届きましてね。
そこには
「寿命という大きな空間の中に自分の瞬間瞬間をどう入れるかが
私たちの仕事ですね。
と書かれていた。
十歳の子どもというのは、もう大人なんですよ。
あらゆることをピーンと感じる感性を持っているんです。
僕自身のことを振り返っても
十歳の時におばあさんの死に接して
人間の死というものが分かりました。
子どもたちに命の大切さを語り続けたいと思うのもそのためです。
日野原重明さん ２０１７年（平成２９年１８日没
（『致知』２００８年１２月号 特集「心眼に生きる」より
『日野原重明の名言』
1.自分の命がなくなること言うことは、自分の命を他の人の命の中に残
しておくことである。
自分に与えられた命を、より大きな命の中に溶け込ませるために
生きていくことこそが私たちが生きる究極の目的であり
永遠の命につながることだと思う。
２．生きがいとは、自分を徹底的に大事にすることから始まる。
３．自分のためにではなく、人のために生きようとするとき、
人は、もはや孤独ではない。
４．鳥は飛び方を変えることが出来ない。動物は這い方、走り方を変え
ることは出来ない。
しかし、人間は生き方を変えることが出来る。
５．なんと言っても、人が人に与える最高のものは、心である。
６．命はなぜ見えないか。それは命とは君たちが持っている時間だから
なんだよ。
死んでしまったら自分で使える時間もなくなってしまう。
どうか一度しかない自分の時間、命を
どのように使うかしっかり考えながら生きていってほしい。
さらに言えば、その命を今度は自分以外の何かのために使うことを
学んでほしい。
７．生かされている最後の瞬間まで、人は誰でも『人生の現役』
なのだから。
８．私たちは運命を生きるのではなく、運命を作っていくのです。
１０．幸福というものは、失いかけてはじめて気が付くものなのです。
１１．かって自分ができなかったこと、やり残したことを思い切って
やることが『夢を叶える』ということなのです。
１２．ビジネスのために人間があるのではなく、人間がらしく
生きるためにビジネスがある。
１３．地位や名誉は死ねばなくなる。財産も残したところで
争いの種をまくだけですが
『ありがとう』のひと言は、残される者の心をも救う
何よりの遺産です。
１４．『余生をどう送りますか？』とよく聞かれます。
私は『余生はありません』と答えます。
１００歳でも、いつも現役だからです。
１５．人を許せるか否か。それは人間に与えられた試練です。